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EESレポート

EESレポート

メガソーラー事業とそのリスク

2012/06/01

レポート

イー・アンド・イー ソリューションズ株式会社
温暖化・エネルギー対策グループ
GM 池 知彦

本レポートは「産業と環境」2012年6月号に掲載されたものです。

1. 固定価格買取制度

経済産業省は2012年6月18日、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」通称「固定価格買い取り制度」の2012年度の調達価格(買い取り価格)と期間を、最大出力1MW以上の太陽光について42円/kWh(税込み)で、20年買い取ることに決めたことを発表した。(表1)

同制度は、太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスの5種類の再生可能エネルギーによる電力を全量買い取ることを電力会社に義務付けるものであり、特に最初の3年については、自然エネルギー発電事業者の収益についても十分配慮した価格設定が行われるとされていることから再生可能エネルギーの普及に大きく貢献するものと言われている。


表1 2012年度の再生エネルギー固定買取価格

種類 単価
(税別)
単価
(税込み)
期間
太陽光発電 住宅用 42円 42.00円 10年
住宅用(ダブル発電) 34円 34.00円 10年
非住宅用 40円 42.00円 20年
風 力 20kW未満 55円 57.75円 20年
20kW以上 22円 23.10円 20年
地 熟 1.5万kW未満 40円 42.00円 15年
1.5万kW以上 26円 27.30円 15年
中小水力 200kW未満 34円 35.70円 20年
200kW~1000kW 29円 30.45円 20年
1000kW~3万kW 24円 25.20円 20年
バイオマス 木質バイオマス(リサイクル木材) 13円 13.65円 20年
廃棄物(木材以外)バイオマス一般 17円 17.85円 20年
木質バイオマスー般(パーム椰子殻含む) 24円 25.20円 20年
木質バイオマス(未利用木材) 32円 33.60円 20年
メタン発酵ガス化バイオマス(下水汚泥など) 39円 40.95円 20年

2. 国内のメガソーラー建設計画

国内における大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設については、福島第1原発の事故以降著しく関心が高まっており、関連事業への参入が相次いでいる。

上述の固定価格買取制度における事業者に配慮した電力価格が、これを後押ししていることもあり、従来電力事業に関係のなかった業種からも事業への本格的な参加を表明する企業が増加している。


電力会社は平成32(2020)年度までに太陽光発電により14万kW分を整備する計画となっているが、これまでに公表されている電力会社以外の民間企業による計画の総出力は50万kW近い値となっており、今後更にさらに導入の動きが広がる傾向にある。

表2にウィキペディアに掲載された情報より作成した、現在国内で進行中の一般企業による売電目的のメガソーラー事業の事例について示す。但し件数が多いこともあり、出力2MW未満の比較的小規模なものについては表中から除外している。


表2 一般企業による売電目的のメガソーラー事業(ウィキペディアより作成:2MW未満を除く)

表2 一般企業による売電目的のメガソーラー事業

主だった企業として、空測量大手の国際航業ホールディングス(HD)やリース国内首位企業のオリックス、携帯通信会社であるソフトバンク等の参入が目立つ。またシャープ、京セラ等、太陽光パネルメーカーが事業者として参画を表明している点も特徴的である。

建設予定地としては、未利用の工業用地や遊休地、廃棄物処分場の利用等が予定されており、地方自治体等も導入に積極的である点が印象的である。

太陽光発電は導入に係る時間が短く、環境面の影響も少なく、用地復旧が容易である、土壌汚染等の懸念がない等の特徴が太陽光発電の好まれる理由であると思われる。

固定価格買取制度における購入価格が確定したことで、参入企業は今後更に増えるという見方もある。

3. メガソーラー事業のリスク

太陽光発電は一般に環境への影響が少なく、稼動部分もないことから、維持管理や修繕等に係る労力やコストが低いという認識がある。また太陽エネルギー自体も地域におけるばらつきが比較的小さいと考えられていることもあり、参入への障壁が比較的低いと認識されることも企業によるメガソーラー事業への参入が活発化している要因の一つであると思われる。しかしながら、メガソーラー発電事業においては、下記のようなリスクが存在している。

(1) 故障発生率

ソーラーパネルは構造的に故障が少なく、発電性能の劣化も少ないと認識されており、またその認識自体は大きく誤ってはいない。しかしながら、太陽光発電におけるリスクが従来軽視されてきていることも事実であろうと考えられる。特にメガソーラー事業に関しては国内外における事例が限られており、また歴史も浅いことから十分な知見とノウハウの蓄積が行われてきていないこともまた事実である。

従来知見においてはソーラーパネル自体の故障は殆どないが、周辺機器であるパワーコンディショナーが故障することがあるという認識が一般的である。


パワーコンディショナーは、10年~15年程度でメンテナンス、もしくは故障による入れ替え工事が必要になる可能性が高く、この点はメガソーラー事業においてもコストとして事前に計上されておく必要がある。

ソーラーパネルについては、家庭用のシステムを対象としたものであるが、産業技術総合研究所(以下、産総研)により、近年新たなデータが提示されている。


産総研では最新エネルギー技術の実証や評価を目的として、2004年4月から太陽光パネルメーカー各社の住宅用パネルを設置し、太陽光パネルを中心とする太陽光発電システムの品質や故障・不具合の実態について調査・研究が行われている。同研究が行われている実験施設は「メガ・ソーラタウン」と呼ばれており、総出力は全体で1MW弱、機器はすべて住宅用のシステム(住宅用システム210台)で構成され、国内の主なメーカーの製品を幅広く網羅して設置されている。

「メガ・ソーラタウン」の事例では、ソーラーパネルにおいて実験開始後5年間の間に、メーカー間で差異はあるものの、0.3~4.4%の故障率が認められている。また、システムとしては、210台中67台で何らかの形での故障・不具合が生じている。

更に産総研が、NPO法人(特定非営利活動法人)太陽光発電所ネットワークの協力を得て、国内で設置された住宅用太陽光発電システム257件の発電性能や保守履歴を調査した結果では、設置から10年以内に太陽電池パネルを一部でも交換した事例は、34件(13%)に上ることが分かった。国内大手メーカーは「10年保証」を掲げ、期間内に出力が10%低下した場合に無償で交換に応じている。この基準に多くのパネルが抵触している形となっている。また、パワーコンディショナーはさらに不具合発生率が高く、部品交換を含めると、10年以内に43台(17%)が交換されているという結果となっている。

これらの結果はメガソーラーに直接的に当てはまるものではないが、ソーラーパネルあるいは太陽光発電システムの故障率が従来信じられていたものよりも高いものである可能性を示唆している。

(2) 維持管理・モニタリング

上記のような高い故障率の可能性が示唆されているにも関わらず、メガソーラーにおける維持管理やモニタリングについては、国内において十分なノウハウが蓄積されていないという問題がある。小規模な太陽光発電については維持管理方法の一応の確立がなされているが、メガソーラーにおいては必ずしもその手法が通用しない。

例えば関西電力日本最大級の太陽光発電所「堺太陽光発電所」における出力は10MWという 大規模なものであり、設置されているソーラーパネルの枚数は 約7万4000枚に上る。

このような規模を対象として家庭用ソーラーでのノウハウを適用することには明らかに無理がある。また、国内においては電力会社等の極めて限られた事例しか存在しておらず、維持管理等を実施するメンテナンス会社も限られている。

(3) 経年劣化

ソーラーパネルは時間の経過に伴い、変換効率が低下する。しかしながら、その具体的な程度については、一般に認識されていない。

例えばJIS C 8907「太陽光発電システムの発電電力量推定方法」では、経時変化補正係数という設計パラメータがあり、モジュール製造業者から入手できない場合は0.95(マイナス5%)という値を使うことになっている。一方、メーカー保証における許容出力低下幅は、平均1%/年(20%/20年)等となっている。

これら数値の妥当性については、パネルメーカーが公表を好まない傾向にあり、トラックレコード等が利用できるケースも稀である。

各パネルやストリングスを対象としたモニタリング手法についても普及していない。

(4) 塩害および保証

メガソーラーの建設地として予定されている用地は工業用地等として整備された沿岸の埋立地となるケースが多い。これら地域では塩害の問題が生じる可能性がある。

一般的には、直接海からの波しぶきがあたる場所を「岩礁隣接地域」、海岸から200m~500m以内を「重塩害地域」、海岸から2km以内を「塩害地域」と区別してが、これら基準は地域により異なる。表3に一般的な塩害域の定義について示す。


表3 一般的な塩害域の定義

表3 一般的な塩害域の定義

これら地域において発電施設(パネル等)の稼動についてメーカー側の保証が得られない場合もある他、防錆、防食等の対策を講じることが必要である点留意すべきである。

(5) 電力買取価格

前述のように、本年度の電力買取価格は事業者の採算に配慮したものとなっており、大きな問題はない。しかしながら、固定買取価格は、事業者の利潤(採算性)や賦課金の状況などを考慮しつつ毎年見直されることになっており、現在の状態が今後も続くという保証はない。むしろ数年内に価格は低減するとの考えが一般である。また平成32年度(2020年度)までには抜本的な見直しが行われることになっていることから、制度の動向についても把握しておく必要がある。

(6) パネルメーカーのサポート体制

資源エネルギー庁によればソーラーパネルの製造用装置メーカーがターンキーソリューションとして新興国(特に中国)に一貫製造ラインを供給したため、パネル価格が大幅に低下し、パネルメーカーは市場において苦しい戦いを強いられている。

パネルメーカー大手である米国のファースト・ソーラー(First Solar)とサンパワー(SunPower)、カナダのカナディアン・ソーラー(Canadian Solar)などの大手企業は2012年になっても損失を計上し続けている他、米エバーグリーン・ソーラー、ドイツのQセルズ(Q-Cells)が2012年4月に破産申請したことなども記憶に新しい。現実に経営破綻しているメーカーがある以上、メーカー保証に対する疑念は払拭できず、交換部供給や性能保証等を含む長期のサポートについても不安材料となる。

4. イー・アンド・イー ソリューションズ株式会社のサービス

弊社イー・アンド・イー ソリューションズ株式会社は前述のようなメガソーラー事業のリスクに対応するため、下記のような項目について事業のリスクチェック、対応策のアドバイス等のサービスを提供している。

また、第三者的立場にある太陽光発電のシステム設計・施工会社より各種情報を収集し、実践的なノウハウの蓄積、リスク解析等の検討を行っている。

メガソーラーをはじめとする再生可能エネルギーの開発は今後の日本にとって極めて重要な分野であり、各種リスクを把握し、適切な対応を取ることで成功裡な事業の実施に貢献していきたい。

【業務サービス概要】

発電量調査
本事業の実施計画に基づき、太陽光発電設備を設置した場合における見込発電量の推定を行う。
太陽光発電設備に係る技術検証
本プロジェクトで採用される太陽光発電設備および付帯設備に関し、導入技術の妥当性について評価を行う。
プロジェクト関連契約の検証
本プロジェクトの電力受給契約、EPC契約、O&M契約、保証契約等の各種プロジェクト関連契約について、妥当性の検証を行うとともに、必要に応じ助言および契約条件の提案を行う。
完工認定、性能認定、約定賠償金水準の条件提案及び条件検証
事業設備の完工検査確認、完工認定試験、性能認定、約定賠償金水準の条件等についてレビューし、必要に応じ改善のための提案を行う。
環境面の検証
プロジェクトによる環境影響の可能性について検証および検討を行う。
キャッシュフローモデルの検証
事業計画に関するキャッシュフローモデルについて、前提条件の設定に係る妥当性を検証する。
完工認定及び性能保証試験の検証
事業設備の完工検査確認、完工認定試験及び性能保証試験結果レビューを行い、その結果について評価する。